涅槃図の話

先日、伊勢物語をテーマにした展覧会を見に行った際、英一蝶の「見立業平涅槃図」という作品がありました。見立と名乗ってなお、涅槃図の様式はそのまま踏まえていたので(横たわる業平、嘆く女性たちと男性も多少、動物たちは各々花をくわえてその死を悼みに来る)、一般人の涅槃図って作っていいものなの?お釈迦様だけじゃないの?というかそれって罰当たりとかで怒られるんじゃね?と疑問に思ったので調べてみたら、出るわ出るわ。
高名なお坊さん(法然上人やら日蓮上人やら)があるので、怒られる線はこの辺で消えました。率先してやってたんだな。ご本人の意思がどれほど介在していたのかは謎だけど。で、あとは有名人や著名人。業平や芭蕉、四代目中村歌右衛門に八代目市川団十郎って、要するにニーズあるところに作品もできるよってことなんだなあ。罰当たりとか気にしなかったのかな。で、行き着くところまで行った感があるのが伊藤若冲「果蔬涅槃図」(野菜涅槃図)でした。中央で大根が横たわって、他の野菜が集っています。そういえばこの人って実家が八百屋だったよ(そして商売を嫌がってさっさと隠居しやがったよ)。こんな「面白い」でくくっていいのかちょっと悩むような題材ですら本当に上手いのがなんとなく面白くないぞ。でも機会があれば京都まで見に行きたい。
たとえば一神教圏で「殉教者コスプレ」とかしたらものっそい怒られそうなイメージがありますが、日本は思った以上に寛大でした。というより、作品としての出来がよければ(たいがいのことは)どうでもいいわ!ってことなんだろうか。ニコニコ動画みたいに。