「白の闇」を読みましたよ

ジョゼ・サラマーゴ著/雨沢泰・訳「白の闇」(NHK出版)読了。
「衣食足りて礼節を知る」とはよく言ったものだと思いました。
原因不明の失明が突然蔓延し始める世界。視力を失った人々の視界は暗闇ではなく白く輝くようになり、伝染病とおぼしきそれはまたたくまに広がっていく。政府は感染した人々を隔離するも、収容所の中も外も混乱を極めていく。失明することによって自分の当たり前に見ていた世界が、収容所に入れられることによって住んでいた場所が、そして外の世界もどんどん失われていくおそろしさ。無秩序さからくる恐怖、不衛生さや略奪など考え得る悪いことはほとんどすべて作品中で起こります。早期に失明した目医者の妻だけが何故か失明しないために、彼女の視点から語られるリアリティあふれる悪夢。衣食住にまつわるものごとが思い通りに、いつも通りに進まない恐怖。
名前のない登場人物、地の文と続いている会話などわりと不思議な感じの文章ですが読みやすく、内容にも引き込まれて先を急いで読みました。面白かった。